島根県江津市、日本海に面した山の中腹に、キリスト教愛真高等学校はあります。全校生徒45人。全寮制で、生徒たちは寮で寝起きをともにし、自分たちの食事をつくり、畑を耕し、鶏を世話し、ともに歌い、たくさん仲間と向き合って、同じ屋根の下で眠ります。スマホも、現代的な便利さもありません。だからこそ、小さな単位で、自分に必要なことを積み上げていく毎日を過ごしています。
いまの時代の基準からすれば、極端すぎるのかもしれません。それでも私たちは、日本のなかにこういう場所がひとつくらいあってもいいのではないか、と考えています。愛真にある生活を求める子たちが、きっといつの時代にも数十人はいると思うからです。
なぜ、小さいままでいるのか

今の世の中は、大きすぎる。そう感じながらも周りに合わせて、たくさんのことに耳をふさいで、現代のスピードに慣れていく。大きな社会で生きるために、それは必要な技術かもしれないし、多くの人たちはその中でやっていく術を身に着けていくのかもしれません。
でも、それが難しい人も絶対にいる。多感な高校時代にこそ、耳をふさがずに「自分の声」と「目の前の相手の声」を聴くことができる、守られた環境があってもいいと思っています。社会は守られていない場所だらけかもしれない。だからこそ高校時代に耳をふさぐ訓練をするのではなく、自分の声と・目の前の相手の声を聴ける子たちを、育てていかないといけないと思います。

愛真の中で、生徒たちはたくさん葛藤しています。密な人間関係に疲れながらも、そこで自分は何を感じているのかに、誰もがじっくり向き合っています。毎日2時間、自分自身と静かに向き合う沈黙の時間に、彼ら彼女らの多くは日記を書いています。そして、毎日の夕会の場で、ひとりずつ内省で見つけた自分の心の声を、みんなの前に置きます。大人でも驚くほど、彼ら彼女らの言葉は強いものです。
この学校が存在する意義は、いまの社会の中で、一人ひとりが自分で考えて、自分の心に正直に生きていく――そういう人を、ひとりでも増やしていければいいのではないか、ということです。社会を作っていくのは、誰か強い人が声をあげることも必要だけれど、きちんとものを考えて、日々を丁寧に過ごしていく人が必要だと思うんです。
矢上 俊彦(教頭・国語科)
みんな、一人ひとりの命が大切にされている。そして、少しずつ心を開いていける。失敗してもいいし、やり直せる。それを許してくれる場所だなと思います。一番立派な人がいい、失敗しないのがいい――そういう価値観の場所ではないんです。
市森 倫子(家庭科・卒業生)
すごく深いところを私にさらけ出してくれる生徒との出会いが、これが本当に愛真で学ぶべきものだったんだなと感じる日々でした。
野間 菜月(養護教諭・卒業生)
愛真で育てたいのは、「平和を作る人」

愛真の教育理念を、私たちは「平和を作る人」という言葉で表しています。
これは思いつきの標語ではなく、社会に出ていった卒業生たちの姿から見えてきた言葉です。卒業生はそれぞれの場所で働きながら、人や自然への視点を持ち続け、その場で調和をつくる働きをしています。ここでいう平和とは、紛争を解決するような大きな話だけを指すのではありません。価値観の違う人どうしが対話し、相手を理解し、信頼をつくっていく――そういう日々の平和のことです。
平和というのは、紛争解決とか、そういう大きな意味だけじゃない。まったく違う価値観の人間同士が、ちゃんと対話して、相手がなぜそう思うのかを理解して、受け止めて、信頼関係をつくっていく。愛真で起きているのは、本当にそういうことなんです。
新江 進(理科)
世界平和を作る人になる。自分が与えられた場所で、平和のために何ができるかを考える。内村鑑三の流れをくむこの学校は、それを生徒に手渡しているんだと思います。
村上 守行(聖書科)
けれど、愛真を存在させ続けることは難しい

愛真という場が素晴らしい場所であることは、私たち教員は確信しています。ですが、少人数で、生活を丸ごと共にする教育には、たくさんの費用がかかります。生徒一人あたりにかかる費用は、大規模校とは比べものになりません。そしてその費用を、少人数の授業料だけでまかなうことはできません。
もし授業料だけで運営しようとすれば、愛真は経済的に豊かな家庭の子どもしか学べない学校になってしまいます。それは、どんな生徒にも開かれた場所でありたいという、この学校をつくった願いに反します。少人数教育を続けられなくなれば、愛真が愛真である意味も失われます。実際に、生活と仕事が地続きであるこの環境で働き続ける大変さから、学校を離れていく先生もいます。何もしなければ、この学校はいつかなくなってしまうかもしれません。それが、いま私たちが直面している現実です。
定員が満ちたとしても、やはり少人数で成り立っている学校です。授業料だけでやろうとすると、経済的に豊かな人しか学べない学校になってしまう。少人数教育を維持していかないと、この学校が設立された意味そのものがなくなってしまうんです。授業料だけではまかなえないことは確かですから、寄付を、ぜひ多くの方にお願いしたいと思っています。
栗栖 達郎(校長・理科)
他の高校でも、いまはいろんなユニークな取り組みがあります。それでも、ここまで生徒同士が自分たちの生活について真剣に話し合う環境は、そうはない。この環境が日本にあるということ自体が、ひとつの希望になるんじゃないか。だからこそ、この学校が続いていってほしい。この環境を次の世代に引き継ぐことが、いまの自分の使命だと思っています。
正田 満(社会科・卒業生)
あなたの寄付が、この場所を未来へつなぎます

愛真は、たくさんの人に支えられてきた学校です。卒業生も、保護者も、一度この場所に触れた人たちが、「どうにかしてここを支えたい」と思ってくださいます。私たち自身の力だけでなく、周りの支えによって、この学校はここまで続いてきました。
全校生徒45人の、小さな学校です。けれど、ここで一人の人間が「自分は自分でいい」と思えるようになり、誰かと対話し、平和を作る人として社会へ出ていきます。その積み重ねが、いまの日本に、ひとつくらいは残っていてほしい。もしそう願っていただけるなら、どうか、ご寄付という形で、この場所を未来へつなぐ一員になっていただけませんか?
自分たちが頑張っているというより、周りからの祈りや支えによって、自分たちが存在できている、働けている、と感じる場なんです。保護者の方も『自分自身がここで育てられた』と言ってくださる。どうやったら愛真を支えられるだろう、と思ってくださる方がたくさんいる。うまく言えないけれど、そうなってしまう学校みたいなんですよね。
栗栖 達郎(校長・理科)
みなさまのお力が、この学校を続けさせてくれます。
